DX班


メンバー


・鈴木悠
・熊﨑駿人
・近藤光
・原嵩真
・竹内龍平
・津﨑裕介
・西脇彰

主な研究テーマ


・AR
・ブロックチェーン
・DTN
・Fog Computing

概要


 BC(Block Chain)によるIoTプラットフォームの負荷分散,DTN(Delay Tolerant Networking)におけるデータ転送, ARによるセンサデータ表示の研究を行っています.

具体的な研究テーマ


・センサデータAR表示

 モノがインターネット経由で通信を行うIoT(Internet of Things)サービスが注目されている.IoTによってあらゆるモノがネットワークに接続され,様々なデータを収集することが可能である.ネットワークに接続されるデバイス数の増加や,高速化するデータ通信,信頼性の要求に対応するため5Gと呼ばれる次世代通信規格へと進化している.5Gは高速大容量,多数同時接続,高信頼,超低遅延の通信を目指している.これにより,ARやVR,自動車の自動運転などの新しい技術の実現が可能である.
スマートフォンやタブレット端末などのAR表示機器越しで現実世界を写すと,ある決められた位置にナビゲーションや3Dデータを出現させ,追加で情報提示をする技術としてARがある.一般的には,ゲームや地図アプリなどのナビゲーション,エンターテインメント分野などに用いられている.また医療などの様々な分野でも活用されている.
IoTの様々なデータを収集可能な特徴と,現実世界の中にデータを重ねて表示するAR技術を組み合わせることで,その場所の状態,モノの状態,人の状態などを見やすく確認することができる.

本研究では,ARによってセンサデータを可視化して表示するシステムを作成し,実装することを目的とする.
提案したシステムでは,マーカーを読み取ることでARコンテンツを表示する.マーカー型ARを採用した.また,センサデータは温度データを採用し,温度によって表示形式を変更する処理をNode-REDという開発ツール内で行った.ARを作成する際にはA-FrameというオープンソースのWebフレームワークを用いた.
提案システムを使用するにあたって,ARコンテンツ利用者はコンテンツの表示限界を知る必要があるため,マーカーとAR表示器機との距離を伸ばす実験と,マーカーとAR表示機器の角度を変える実験を行った.その結果,距離は2.5[m],角度はマーカーがAR表示機器の画面内に収まっていれば表示することができた.このことからARマーカー設置範囲を絞ることができた.
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図1 AR実験の様子
 また,マーカー型ARでは適さない屋外環境におけるセンサデータを表示する手法として位置情報推定技術を用いてユーザの位置に応じた表示を行うロケーションベースARを用いたシステムの実装も行っています. GNSSは周囲に高層建築物や上空に障害物がある状況では,人工衛星からデータを受信できないまたは建築物に電波が反射して受信し正しい位置の推定ができない. VPSは建物などの長期間変化しにくい物体の特徴点を基準に位置推定を行うため,都市部での位置推定が有効であるが,環境が変化しやすい自然物が多い場所では精度が下がる. 以上のことからGNSSとVPSを併用することで互いの補完ができると考えるます. 現在は実際のセンサネットワークに作成したシステムを適用することを考えています.
 <キーワード>IoT,センサデータ,AR

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図2 ロケーションベースAR表示結果
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図3 システム構成

・ブロックチェーン技術を適用したIoT データ流通方式の研究

 IoT(Internet of Things)の普及により,IoT サービスを構成する IoT デバイスの台数も増加しています. それに伴い,IoT サービスの種類も増加しています.その結果,単一種の IoT データだけではなく,複数種のIoT データを利用すること,大量のIoT データの収集/解析を行うこと,スケーラビリティに対応したIoT データ流通基盤が必要です. そこで,IoT データを流通させるうえで,重要なプライバシに関わるIoT データのアクセス制御に重きを置いた新たなサービスモデル Ticket-based Access Control を用いた Tag ID-based Pub/Sub モデルが提案されています. このサービスモデルは,複数のIoT デバイスをまとめてTag ID と紐づけ,Ticket と呼ばれる一種のトークンを用いて認証,認可を行いつつ,データ流通させる Pub/Sub 通信モデルのことです.
 しかし,このモデルには Ticket による認証・認可を行うチケット認証・認可基盤(TAAI:Ticket Authentication and Authorization Infrastructure)と呼ばれる第三者があります. チケット認証・認可基盤は,チケットの認証,認可を行いつつ,データ流通を行うBrokerとしての役割を担っています. このモデルにおいてチケット認証・認可基盤は,チケットの認証,認可に必ず関わり,Broker の機能を果たすため,単一障害点となり得ます. つまりチケット認証・認可基盤がダウンした場合,システム全体がダウンする可能性があります.
 本研究では,単一障害点を排除することを目的に,ブロックチェーン(BC)技術を適用することで,チケット認証・認可基盤が行っていた処理を各ノードに分散する方式を検討しています.
 <キーワード>Blockchain,Publish/Subscribe 通信モデル,Fog Computing,アクセス制御,IoT データ流通

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図1 ブロックチェーン技術適用方式

・DTNにおけるデータの散らばり

 大規模災害によって既存の通信インフラが使用できない状況において,スマートフォンのみで通信が行えるDTN(Delay/Disruption/Disconnection Tolerant Network)が注目されています. DTNとは,災害時のような通信基盤が機能していない劣悪な通信環境でも信頼性の高い通信を実現する技術です. DTNルーティング方式は,複製メッセージを蓄積し通信可能になった場合に送信する蓄積運搬刑転送(SCF:Store Carry Forwawd)に基づきます. これはつまり,データを保持しながら移動し,通信可能な範囲に他のノードが存在した場合にデータを送信する方式です. DTNの代表的なルーティングつまり,SCFの代表的なものには感染型中継転送方式(Epidemic Routing)があります.
 Epidemic Routingとは,送信元のノードがメッセージを作成し送信可能になった全てのノードにメッセージを転送するルーティングです(図1). 送信元でメッセージが作成され,作成したメッセージを複製して,全てのノードが移動し,ノード1,ノード2と通信可能となったとき複製メッセージをそれぞれ送信します. 受信したノード1,ノード2はメッセージを複製し,それぞれの通信可能範囲にいるノードに複製メッセージを送信します. この動作を何度も繰り返し複製メッセージが広まり,宛先のノードにメッセージが到達する仕組みです.
 現在は主にシミュレータを用いてデータの広がり具合の計測および特定のデータの広がりを抑制する方法について研究を行っています(図2).
 <キーワード>DTN,対遅延性ネットワーク,セキュリティ

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図1 DTNとは
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図2 シミュレーション例